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酒造会社の挑戦 – マーケティングと企業努力

Column 06.10.2021

沖縄海邦銀行 かいぎんエコマガ vol.174 2019年 9月号掲載


1年前、東京にある国際展示場でとある酒造会社との出会いから始まり、1年をかけてベトナムへの商品出荷を果たした。準備から商品化までの流れとともに、企業のマーケティングの一例を紹介したい。


1. メーカーとの出会い

私はベトナムで日系物流会社に勤務しているが、1年ほど前に突然上司から「こんな焼酎があるんだけど、ベトナムで売れそうか?」と聞かれた。それまで3年間、ベトナムで酒類販売を行ってきた経験から言えば、正直どんなお酒でも売る自信はあったが、絶対に欠かすことができないのが、マーケティングとメーカーの企業努力であることを伝えた。この酒造会社が国内のみならず、海外での販路拡大にもとても熱心だったため、このメーカーの大切な商品を当社で扱いたいと思い、サポートしていくことを決めた。
出荷に向け、大きく2本軸をたてた。一つ目は、輸出入手続きにかかる書類の準備であり、二つ目は、現地でのマーケティングプランをメーカーと一緒に考案することだ。
手続きについては、当社自身も酒類輸出の免許を取得するところから始めた。これは、今後のことを考え、海外に輸出したい多くの酒造メーカーと仕事ができるよう当社自身でこの免許を保有しておく必要があるものだと考えたからである。こうすることで、メーカーが慣れない国際売買契約を行うのではなく、当社と日本側で国内売買契約を結ぶことで海外進出が可能になる。また、2019年4月1日からベトナムにおいて、焼酎や日本酒の関税がゼロパーセントになるということでタイミングも良かった。私自身、貿易に携わる身として、色々試せるチャンスでもあり、面白みを感じていた。
酒造メーカーとのマーケティングプランについては、酒造メーカーの社長と常務が自ら現地に足を運び、調査と販促を行いたいとのことだったので、限られた出張期間の中で少しでも実りあるものにしようと現地の飲食店にも協力を仰いだ。
まずは一般消費者向けに、ベトナム人の多い飲食店で試飲会を行い、ベトナム人のこの商品に対する反応を確認した。6階建てのレストランの上から下まで、酒造メーカーと1席ずつ回り、試飲をしてもらうという、日本では考えられないなんともアナログな方法で、お客さんの反応を直接ヒアリングする手法を取った。ベトナム人にとって普段飲みなれない焼酎は入り方が大事である。甘いリキュールのように、グレープフルーツ等のジュースで割ると好まれることがわかった。
法人向けの取り組みとしては、ホーチミンで繁盛している15店舗ほどの日本食レストランのオーナーを招待し、商品の勉強会を行った。焼酎が造られる工程や、商品の特徴やおいしさを社長自ら熱心に説明した。飲食関係者からは、ベトナムに力を入れていこうという気持ちが伝わったとの声が多く聞かれた。
こうした準備を行いながら、2019年7月にようやく商品がベトナムのレストランに並んだ。もちろん販促を行った飲食店の方々はそのお酒をすぐに取り扱ってくれた。

 

2.今後の課題

出荷までに1年を要したことを考えれば容易なことではなかったが、二人三脚で酒造会社と歩んできた。今後はより多くの人に飲んでもらえる機会を仕掛けていかなければならないが、メーカーが最大限にサポートしてくれるという安心感があるので、私自身も営業が出来ていると強く思う。
この商品が今後ベトナムで売れる焼酎のTOP3に入るよう今は目指していきたい。

 

引用:  vol.174 2019年 9月号 —かいぎんエコマガ
海邦総研が企画編集し沖縄海邦銀行が月1回発行し、
沖縄の経済と経営を分かりやすく伝える「かいぎんエコマガ」
執筆者: 金城緑
企画編集:海邦総研

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