戦後の日本において、経済発展とともに成長してきた物流システム。配達時間の指定や、低温管理された状態で消費者の手元に届くことが、まだ当たり前ではないベトナムの現状と今後の可能性について考えてみたい。
1. ベトナムの物流の現状
日本の発達した物流システムは、消費者の手元に届くまで、配達時間の指定だけではなく、温度管理もされた状態で配達されるということが、今や当たり前のことである。
ここベトナムでは、配達時間の指定というのは、ほとんど機能しておらず、荷主が留守だった場合、配達人が荷主の家の前で電話をかけ「荷物はどうしますか?入り口に置いておく?隣の人に預けておく?明日は忙しいから、今どうにかしてほしい!」などと、日本では考えられないやり取りが行われており、これもまた行き当たりばったり対応している状況だ。ベトナムでEコマースがあまり発達していないのは、このようなことが理由かもしれない。現状を見ていると、商品が手元に届かない事態や、代引きによる集金が困難な事態に陥るなど、あらゆるリスクが浮かび上がる。
次に、温度管理についての認識だが、温度管理されるべき食品が、炎天下の中バイクで常温配送されている様子をよく見かける。買った牛乳がヨーグルトのようになっていたなんていう話も聞いたことがある。少し痛んでいるものでも、
「ちゃんと火をとおせば大丈夫」と言って、口に入れてしまう。冷凍食品に関して言えば、一度解凍されたものは、もう一度冷凍すれば良いと思っている人も少なくない。持ち帰り用のケーキについている保冷剤が溶けていたためソースと思い、ケーキにかけてしまったなんていう話もつい最近の出来事である。
保冷剤や蓄冷剤の存在をそもそも知らない人や、温度管理について間違った知識を持つ人も多いのが現状だ。
2.Eコマース配送とコールドチェーン
しかしながら、経済の急速な発展によって、Eコマース配送とコールドチェーン展開(低温管理された配送)は、物流市場の中でも、発展していく可能性が最も高い分野だと考える。スマートフォンの普及により、確かに以前よりもインターネッ
トで簡単に買い物が出来る時代になった。その現状に物流が追いついていない状況なのだ。こうした中、最近は、メーカー独自で物流機能も備えたECサイト確立を計画するなど、少しずつEコマースにも変化が起きている。また、決済方法に関しても、比較的持ちやすいデビットカードの普及が、今後Eコマースの発展を大きく支えていくことになるだろう。中心部だけでなく、郊外やその先の田舎まで配送可能なら
しめることが目下の急務である。
コールドチェーンにおいては、“食品の安心・安全”というキーワードが際立つようになってきた。経済発展による輸入品の需要が高まっており、あらゆる生鮮食品、健康食品、医薬品等の温度管理が必要とされる製品がベトナムにも輸入
され始めている。最近では、外資系企業だけでなく、ローカルの冷蔵トラックが市内を走る姿も見られるようになってきた。これからの時代は、温度管理された配送が広がっていくだろう。
ベトナムの物流はまだ発達段階にあるが、徐々に整備されていくだろう。今後、沖縄県の県産品の展開という面でも期待できる市場になるのではないだろうか。私も物流チャネルの構築のみならず、現地ベトナムで県産品の市場開拓に役立ちたいと思う。
引用: vol.165 2018年 12月号 —かいぎんエコマガ
海邦総研が企画編集し沖縄海邦銀行が月1回発行し、
沖縄の経済と経営を分かりやすく伝える「かいぎんエコマガ」
執筆者: 金城緑
企画編集:海邦総研